13. 藤井聡太、二冠達成の快進撃

天才ソータ君の快挙を寿ぐ

勝った! 勝った勝った、ホントに勝っちゃった~! なぁに勝つと思ってましたよ最初から。何つって。
しかしひょっとしてこれは勝つな、勝てるぞうんうん、いや絶対勝つby桜木花道……これ半分冗談で、半分はホントに思ってました、昨日から。

前回からの続きで恐縮ですが、不世出の天才棋士・藤井聡太棋聖が2日間にわたる戦いに勝利! 史上最年少での二冠&八段昇段という、栄誉てんこ盛りの偉業を達成したので、これを書かないのは人としてどうなのかと思った次第です。

と言うより、コロナや熱中症の話題続きでサガりっぱなしの昨今、やっと入ってきた快挙系の華々しいニュースだもの。有難くいただきましょうよ皆さん。

断っておきますが、将棋についてはサッパリな私、特に藤井ファンってわけではありません。
ただ、マスコミが彼を追い回し、世間もそのつど異常なテンションで盛り上がるのは、単に将棋が強いからってだけじゃない、そこが気になるんですよ。
こういう人は、その分野に関心が無かった人さえも巻き込んで虜にしてしまう何か、すなわち前回で触れた“ファクターX”を生まれながらに持っている。これは掘り下げるに十分値します。

“持ってる人”は化学反応のスイッチを持っている

いろんな分野でスターと呼ばれる人々は、必ずしも若い人ばかりではありません。
しかし、神の与えた才能に、初々しさやあどけなさが掛け合わさると、ある種の化学反応によって、1×1の結果が10とか20、それ以上に巨大化します。
ソータ君を見ていると、そんな“奇跡の化学反応”の公式が、どうしてもよぎるのです。

18歳になったソータ君、タレ目のベビーフェイスが女性に人気な反面、しゃべり出すとグッと落ち着いてて、やけに謙遜したりして歳のわりに老成感がある。そーか、これがギャップ萌えってやつなのね。
将棋の天才だから地アタマが良く、ゆえにスレてない印象は年配層にもウケが良い……つまり、極めて敵を作りにくい、愛されキャラなんですよ彼は。

こういう人が、海鮮丼がいいとか言ったり、羽織の紐を結ぶのに手間取ったりすると、ますます人気が上がるってわけか。
ついでにあの歯並びさえも、むしろプロとして将棋を第一優先してますアピールになるの? でもちょっと直せば、好感度5割アップは確実だと思うけどな。

ソータ君のこたびの快挙では、まぐれ当たりや若さだけの勢いではない、天才の器の頼もしさというものを知った気がします。
進めソータよ、先は長いが、伸びしろしかないぞ!

Sheila

12. 若いということの付加価値

最年少記録の裏にある“ファクターX”

折しも本稿執筆中の今、18歳の天才棋士、藤井聡太棋聖が二冠を狙う、第61期王位戦第4局の対戦中です。対戦相手は47歳の木村一基王位。今回ソータ君が勝てば、二冠獲得と昇段の史上最年少記録を更新して……と、要するにドえらいレベルの偉業達成目前、ということですね。

こういうとき、世間はたいてい若いほう、今回なら藤井棋聖に肩入れする側につきます。マスコミは報道倫理の手前、木村王位にも精一杯配慮してるんだが、気を遣うほどわざとらしさが香ってきてどうもね。だって対戦日の昼ごはんメニューだのファッションだの、木村王位だけなら誰も話題にしませんもの。

有史以来、人間というやつは何かを成し遂げた年若い人物に対して、常軌を逸した反応を見せる性質があることは否めないようです。年端のいかない子どもが大人顔負けの知識や技を披露したとき、人々はそこに天賦の才という神性を見出すからかも知れません。
けれどそれだけではない何か、つまり大衆の関心を惹きつけて熱狂させる、謎の“ファクターX”と呼ぶべきものが、若い天才の中には必ずある。と、私は思い至ったのです。

若さの“絶対善”に勝てるヤツなどいない

若い人は元気だし、目が澄んでいてお肌もツルツル。これでルックスも良ければ、人気が出ないわけがありません。それより何より、社会に出る前で経歴がキレイなことも大きな強みでしょう。探られて困る黒歴史が無いとは、何という幸せ!
つまり“ファクターX”とは、世間の垢にまみれきった連中が決して真似できない、“絶対善”的な付加価値こそがその正体であり、それは時に山をも動かす強大なパワーを有するということを言いたいわけなのです。

かつて宇多田ヒカルが15歳でメジャーデビューしたとき、世間は驚天動地の大騒ぎでした。
もっと最近なら、同じく15歳で環境保全活動を始めたグレタ・トゥーンベリとか。いまいち人気ないけど。ああその前に、17歳でノーベル平和賞受賞の人権活動家、マララ・ユスフザイという人もいましたっけ。
年若い身であることは、それだけでイヤでも注目を集めてしまうんですね。

ちなみに、同じことを40代以降でようやく達成すると、“苦節××年”とか“遅咲きの~”といった浪花節フレーズを勝手に被せられ、古い写真と共にライフストーリーをバラされて、いいこと一つもないように見えます。“中年の星”と持ち上げられて嬉しいかどうかも正直ビミョーだよなあ。って、余計なお世話でした。

忘れちゃいけないのは、どんなに若くして騒がれた人も、やがては必ず“いい歳した大人”になり、その先の人生のほうが長いということです。
愛らしかったアイドルも、世間を瞠目させた天才子役も、ハタチ過ぎればそれなり帳尻が合い、新たに仕切り直しての勝負が始まる。世の中、案外うまく出来てると思いませんか。

Sheila