22. ハナシにならない話をしたあの人

“痛くなってから行く”は変えられるか

案の定と言いますか、世間は次期総裁選の話題で持ち切りですが、3候補者中でもとりわけ強い個性によって異彩を放つのが、石破茂氏でしょう。
そう、この人ね、相当に世情を勉強していて、それを自分の政治活動のテーマである“共感”にどう落とし込むかを、ものすご~く研究してますね。鉄オタは素だろうけど。

で、昨日などは国会内の歯科クリニックでの定期健診の様子を、取材陣にわざわざ公開しました。
一般に、歯科検診ほど無視されてる呼びかけも珍しいんですよ。歯科医師は「せめて半年に1回程度、痛いとこが無くても検診には来てほしい」とさんざん言ってるのにこの現状、PRが上手くないせいもあるんだけど。

そこへ石破氏ったら週1検診がデフォだなんて、すごくない??? しかも同クリニックが「数少ない憩いの場」とはまた。フツーの人とは、やることなすこと違うわね、やっぱ。歯科医師会と歯磨き業界から感謝状くるかも。

かつて、歯科医院は「痛くなってから駆け込む場所」的な認識で合ってた時代がありました。
昨今、一部の意識高い系さんたちのように、虫歯予防や歯周病ケアはもちろん、歯列矯正やホワイトニングで歯を美しく見せることにも余念がないなど、日本人の審美歯科への意識はだいぶ変わったと言って良いでしょう。
いわゆる“味噌っ歯”の子どもを昔ほど見かけないのも、栄養状態と親御さんの意識が共に向上した成果である可能性が高いし。
さらに忘れがちですが、歯科素材や歯科技工技術の進化も、お口の健康維持の一翼を担っています。もう、感謝しかない。

歯の美と健康は“不要不急”なのか

ハタと思ったんですが。歯列矯正やホワイトニング、セラミック冠などの〈審美歯科〉のケアって、ほとんどが自由(自費)診療、つまり保険外診療の扱いなんですよ。
審美目的や、高額な素材の任意使用に保険適用が認められないのは、歯科に限らないことですが、ということは要するにこれらはどれも、「命に関わらないし、緊急性もない」、即ち“不要不急”認定されているわけで。

保険が使える一般的な虫歯治療に使われる合金や樹脂素材は、前述の通り格段に質が良くなったし、患者の経済的負担が少ないのは本当に助かります。ただ、長期的にはデメリットのほうが大きいと思うんですよね。

金属の詰め物や冠は、見た目がアレなのもそうだけど、金属アレルギーや二次う蝕は相当に申告です。白いプラスチックは、目立たないのはいいんだが、熱や力に弱く、変色や着色が起きやすい、などなど。
いずれも耐久性の点で問題が多く、結局はその場しのぎの対症療法でしかない印象が拭えません。なのに「それがイヤなら自費で高い治療を選べばいい」ってシステム、考えるほどモヤってきてしょうがない。

歯科クリニックは癒しのサロンだとおっしゃる石破氏、上下前歯の歯列がスパ~ッと一直線なのが気になりだすと止まらない……素人のカンですがもしかして、強い歯ぎしりが原因かも。睡眠中の歯ぎしりや食いしばりって、すごく歯がすり減るんですよ。これは経験から申し上げますが。

目の上の政敵からの圧に囲まれるのって、眠ってる間に歯を食いしばってもおかしくないストレスだと想像します。でも、ひとたび摩滅した歯は検診でも取り戻せないから、まあまあお大事になさってください、としか。
……えっ、今日は理容室で散髪ですかそうですか。そうよねー、身だしなみって、た、大切だものね。

Sheila


15. 不要不急の牙城・カラオケ店を使い倒せ

カラオケ好きに冬の時代

コロナ自粛のあおりをまともにくらった業種の一つが、カラオケ関連の店舗でしょう。
一人カラオケ、いわゆるヒトカラ愛好家といたしましても、春からこっちのこの状況はまことに憂うべき事態であり、先のことを考えると強烈な不安からドーキイキギレメマイがしてくるのです。

密室にグループで長時間ステイして、マイクに口つけて大声出しながら大皿で飲み食いするとか、アンチ3密の見本と言われりゃぐうの音も出ませんわよね。
ヒトカラは他人からの感染リスクは無くても、マイクやリモコンがハザードアイテムに……ここまでデメリット尽くしの娯楽も、ちょっと無いのかも。

一時期、恒例の常連さんが集う地方のカラオケ喫茶が、感染クラスタの発生拠点になったとして問題視されました。起きたことは残念ですが、得意な歌を歌ったり、顔なじみとのおしゃべりが何よりの楽しみという皆さんのお気持ちはよーく分かるので、そこは責めないであげてほしい、それだけです。

カラオケ上達の極意は“ぼっち慣れ”

なぜか恥ずかしいとか、受付で断られたらどうしようなど、ヒトカラは最初の一歩に勇気が要ったものですが、一度やってみたら何のことはない。好きな歌を遠慮なく選べるし! 同じ曲を何度でも歌えるし! エコーでも何でもお好きなだけどうぞの世界。好きだけど難しい曲を練習するには、結局一人で行くしかないんですよ。

キーが分からなくて選ぶのを躊躇してる曲って、結構ありませんか? そんな自信のない難曲は、勝手に高低やテンポを調整しまくって確認すればお悩み解消。採点がイマイチでも、誰も聴いてないからドンマイ気にするな。マイク無しで歌って地声を鍛えるのも十分アリだと思います。

リモコンの選曲リストから懐かしのナンバーを拾って、楽しかったあの頃の思い出に浸るとか、歌詞のうろ覚え部分を画面で見て感慨にふける等々、楽しみ方は無限大。
ちなみに、2時間やそこらじゃ絶対に足りないので、できればお得な平日昼間のフリータイム利用を超強力におすすめします。……って、老人かシツギョー者に限られますかねえ。

人前で歌う用の無難な十八番ばかりじゃ、いい加減飽きるというもの。レパートリーが増えたら、急なお誘いにもどっしり構えていられるってもんです。
……でも待てよ。誰かの発案でうだうだしつつもやっぱりカラオケで二次会、とかのあの流れ自体が、そもそも復活する日は来るのかどうか、って話になるわけで父さん。
今はただただ、あの頃が懐かしい?

Sheila

01. ワタシたちは“不要不急”で出来ている

緊急事態宣言渋谷

どこかに消えたキリギリス

突然ですが、例の“不要不急”という謎ワードに、今なおモヤっています。
コロナ禍の緊急事態に鑑みれば、“不要不急”は使い勝手の良い思考停止用語です。しかし一瞬でもムッとくる本当の理由が他にありそうだと、自分なりに掘り下げて見えた結論は、

“不要不急”なもの・こと=〈自分の大切なもの〉そのもの

……だから、だったんですよね。

感染拡大防止対策は、言うまでもなく最優先事項です。でも、めいめいが命の次に大切にしている宝物を、ひとからげに上から“不要不急”呼ばわりされて、気分のいいヤツがどこにいるか、って話ですよ。
旅行やレジャーの移動制限に始まり、娯楽や芸能、スポーツ、芸術といったカルチャーが一斉に動きを封じられたことで、我々は「キリギリスの居ない世界」がいかに乾ききって息の詰まる社会であるか、身をもって知りました。
そしてこうなってみて初めて、人の数だけある“不要不急”たちのどれもが、実は自分のパーソナリティの核を成す、かけがえのないものだったという真実にたどり着いたのです。

自分にとっての“不要不急”、すなわち何があっても守りたいものは何か。新型コロナウイルスの蔓延は、一種のショック療法じみたインパクトをもって、それを問いかけています。

キリギリス上等!

イソップ寓話でおなじみのキリギリスは、のんべんだらりな自堕落キャラの代表格です。
しかし、キリギリスのパフォーマンスがどんなに世界を楽しく豊かに彩っているか、という視点が抜け落ちているのは、甚だ疑問と言わざるを得ません。
だってアリさん連中なんか、まあまあ勤勉でお利口さんかも知れないが、アーティスティックな才能などカケラも持ちあわせてやしませんよ(強め推定)。

そしてそして、そんなキリギリスの存在価値の軽視と、こたびの“不要不急”問題は、どこか深いところで交差している…そんな気がすごくするんですがどうでしょう。

楽しそうに見えるキリギリスも、その道を選んだ覚悟を今まさに試されています。特に、活動の場を奪われた人間界のキリギリス族にとって、今ほど厳しい冬の時代はないかも知れません。実際に生活の困窮など、目の前にはきれいごとでは済まない現実が横たわっています。そこは決して忘れちゃいけない、いえ、自分自身も立場を同じくする身として、忘れようがないのです。

とは言え。キリギリスって実はそんなにヤワじゃない、という気もするんですよ。とりあえず、どこか狭いところで暖を取りながら体力を温存し、復活の日に向けて曲を作ったりして、どっこい生きてるぜ、みたいな。
転んでもタダでは起きない鋼のメンタルとプライドをもって、逆風を器用にいなしながら新しい道を見つけて進んで行く…ほらね、こんなカッコいいこと、アリには絶対出来っこないんだって!

とにかく生きろ、生き延びて前に進め。
自分を含め、全ての“不要不急”を創る人と支える人にメッセージするため、本ブログは生まれました。

まとめてウェルカム、“不要不急”

申し遅れましたが当方、そんな“不要不急”畑をひたすら歩いてきたキリギリス系雑食ライター、Sheilaと申します。業界新聞記者等を経て、書き屋業は30年を超えました。

ここでは、“不要不急”コンテンツをキリギリス族のソウルフードと位置づけて、大人目線でやさしく拾い上げ、ちょい辛スパイスで炒めてユルく発信していきます。
このご時世で切り捨てられそうなカルチャー全般から、懐かし話にモヤる話、くっだらない小ネタまで、アンテナに引っかかってくるものは何であれ食材と見なして調理、もとい全力で“応援”します。
焦げ付かないよう火加減には細心の注意を払いますが、あくまで努力目標ですので悪しからず。

余裕を失くしがちな毎日でも、自分の中の“不要不急”への栄養補給は忘れずにいたいもの。
みんなでちょっとずつ、ヘンな元気をシェアできれば幸いです。

そこまで来ている、誰も見たことの無い時代。顔を上げて、前に進むために。

以上、長くなりましたが、ごあいさつに代えまして。

Sheila