09. 夏虫や

ハエはハイとも申しまして

真夏の悪夢は、身近でいろんな虫と遭遇する機会が増えること。子どもの頃なんかこれがもう恐怖で、夏休みは嬉しさ1割、憂うつ9割って感じでした。
だいぶ耐性はついたものの、よくぞここまで耐えて来ましたねと、自分で自分をホメたい気分。山深い田舎に移住とか、まず無理なタイプです。

年々、夏場にうるさく飛び回るちびっちゃい羽虫が増えた気がしていたら、それっていわゆる“コバエ”の一種らしいのですね。うぎゃ。もっとハエっぽくて大きいのがそうなのだと思い込んでた……それもイヤだけど。この歳になって知るとはまた。

天井から吊るす“ハエ取りリボン”なる捕獲アイテムは知ってても、シカと見た記憶ってのが意外と無かった私。だいぶ昔に笑福亭鶴瓶がCMに出てたと思い出してググったら、1975年のカモ井加工紙「カモ井のリボンハイトリ」と判明!
カモ井さんと言えば、今やオシャレなマステブランド「mt」でおなじみの、あのメーカーじゃないですか! なるほどなるほど。企業に歴史あり、ってそりゃありますよ。
ハエ取り紙がロングセラーなら、ハエさんたちもバリバリ現役なのね。

ちなみにわが家の問題は、“コバエがいなくなるスプレー”のひと吹きで、あっけなく解決しました。1回の噴霧で約2週間は虫除け効果が持続って、一体何がどう働くからそんな魔法が?
“いなくなる”という、微妙に抑制の効いた言い回しにも、深入りタブーな闇感が。
それはともかく、夏場は水回りの衛生管理が特に大事とのことです。

夏の主役はやっぱりコイツなのか

数年前に自宅周辺にはびこる植物を一斉に撤去したら、以来わが家ではG様との遭遇率がゼロに近いレベルの大幅低減を達成! 雑草の茂みなど、害虫の巣になりやすい場所がもしあったら、なる早で取り除くと大きな社会貢献になります、マジで。

そんな具合で油断してたら先日、よそんちから逃げてわが家に迷い込んだと思しきG様とバッタリ!!!
現代人のアドレナリン分泌量が最大レベルになるのは、間違いなくG様と遭遇したときでしょう。全身が瞬時に戦闘態勢に切り替わるという鮮烈な体験のおかげで、日ごろいかに緊張感なく過ごしているかが分かりました。

それにしてもだ、なぜこれほどに嫌われるG様……正式名称すら避けられるのもスゴいが。
昆虫愛キャラで人気を集めるあの香川照之でさえ、G様だけは、…だけはたぶん、例外らしいのがツラい。
例のキンチョー「…ムエンダー」CMでは、“結果”という表現にも脱帽ながら、それらを見下ろし背筋が凍るような笑みを浮かべて頷く香川、けだし怪優。大和田元常務でさえ足元にも及ばない、あれこそ真夏の夜の絶品ホラーで決まりです。

Sheila

08. テレビを棄てろとか言う奴に

“アイテム指定型”アジテーターにご用心

「開運するには、コレを今すぐ捨てろ!」的なアジり動画を、ときたま見かけます。
使ってもいないソファなどがあるなら、確かに処分してもいいのかも。部屋の半分ほどを占拠するソファをなぜかわざわざ置く人が多いの、謎すぎです。

お節介を承知で私からもアドバイス。「絶対要らない○○つのモノ」「○○を持ってたら秒で捨てて!」のような“アイテム指定型”言説は、どれも乱暴だし余計なお世話なんですよ。なので、言われてそのまま従う前に「自分はなぜこれを要らないと思うのか」をじっくり考えて判断しないと危険です。考えなしに手放しちゃうと、高い確率で後悔します。

ところで、ミニマリストっぽい人って、やけにテレビを捨てることを勧めてきませんか?
漫然とテレビを眺めてる時間を他の大切なことに使える、だからユーも捨てちゃいなよとか。
あんまり圧が強めなので反発を覚えるのもそうですが、そもそもテレビってそんなに悪いモノなの?

情報インフラとしてのテレビの価値

以前、自宅にテレビが無い友人は、数日前に国内で大きな災害が起きたことを何も知らずにいました。社会人としてもそうでなくても、さすがにこれはまずいのでは、と思った次第です。

ネットに比べ、令和のテレビは劣勢気味に語られたり、しょっちゅう批判の的になったりします。それでも、テレビから得られる即時性の高い情報は、何だかんだで最強です。
特に今なら、新型コロナウイルス関連の最新情報について最大のソースはやっぱりテレビですもんね。
ネットは好きな情報だけ拾い読みして終わりやすいのが欠点で、そこが新聞やテレビと大きく違うところです。

静かに考え事をしたくなったら、遠慮せずリモコンの電源ボタンを押せば即黙る。テレビのこの聞き分けの良さを、もっと評価してやってはどうでしょう。要は、自分でコントロールすれば済む話なんです。

「テレビを捨てたら、マジで生活変わった!」とかイキってるヤツは、ガン無視でOK。自分は今までテレビごときに操られていましたとバラしてるようなもんです。
今とこれからの社会で生きていくのに、テレビと決別するのはデメリットのほうが大きい。少なくとも私はそう考えます。
めんどくさい意識高い系に絡まれたテレビっ子の皆さん、負けちゃだめですよ!

Sheila

07. ミニマリストさんたちの黄昏

世界は要らないモノであふれてる

今春の自粛期間中に〈○捨離〉に目覚めた人が増えたのは、自然の成り行きでしょうか。
まあ基本、無くても困らないモノだらけだから、8割捨てても案外やってけるという意見にはおおむね納得ですが。

いわゆる〈ミニマリスト〉が登場したときは、そこそこ話題になりました。徹底的にモノを排除するガチ系ミニマリストの部屋にはあるのは、ローテーブルとノートPCくらい。8割どころか9割5分以上をそぎ落とした、不動産サイトの空室情報ページみたいなビジュアルがインパクト大でした。

デジタルネイティブ世代と重なるのか、そうしたミニマリストさんはIT活用のスキルに長けた情報通が多いため、私物は持たずにWebサービスを最大限に利用することで、“高度にムダを排除したミニマルな暮らし”を構築・管理・実践していたわけです。少なくとも去年までは。

言わんこっちゃない、と言われんように

今年に入って、コロナ禍で社会全体が一気に停滞したとたんに詰んでしまったのが、生活の大半をアウトソーシングに頼っていたガチ系ミニマリストさんたちです。
緊急事態宣言発出直後の一時期は、外出の自粛に始まり、飲食店も休業していたから、食料の備蓄がない人はまず食べることに窮した可能性があります。
デリバリーや家事代行サービスも休業や時短営業など、以前のような利用はかなわない状況があったと思われます。

流通やITが滞りなく機能していることが大前提のミニマリスト生活は、非常事態の前にはまことに脆くて危ういのです。家事を外部に丸投げするのは自由ですが、そこは再考する時期かも知れません。
たとえ面倒だろうが、生きるために必要なものごとは、必要だからこそあるわけで。生身の人間が家事を避けて生きられると思うなよ、と。

ミニマリストさんの備蓄嫌いは理解しますが、イザというときの備えが活きるのってこういう時なんですよ。対極に位置する備蓄重視の〈プレッパー〉とかいう人たちも、また行き過ぎが心配になりますけど。
最近は、ミニマリストらしい備蓄スタイルを模索し始める動きも聞かれるので、いいバランスに落ち着かれることを祈ってます。

それでもなお生活臭の無い暮らしにこだわるガチ系ミニマリストさんは、お金持ちよろしくホテル住まいをすればいい。万が一の事態でも、おそらく食べる心配はせずに済みそうですよ。

Sheila