01. ワタシたちは“不要不急”で出来ている

緊急事態宣言渋谷

どこかに消えたキリギリス

突然ですが、例の“不要不急”という謎ワードに、今なおモヤっています。
コロナ禍の緊急事態に鑑みれば、“不要不急”は使い勝手の良い思考停止用語です。しかし一瞬でもムッとくる本当の理由が他にありそうだと、自分なりに掘り下げて見えた結論は、

“不要不急”なもの・こと=〈自分の大切なもの〉そのもの

……だから、だったんですよね。

感染拡大防止対策は、言うまでもなく最優先事項です。でも、めいめいが命の次に大切にしている宝物を、ひとからげに上から“不要不急”呼ばわりされて、気分のいいヤツがどこにいるか、って話ですよ。
旅行やレジャーの移動制限に始まり、娯楽や芸能、スポーツ、芸術といったカルチャーが一斉に動きを封じられたことで、我々は「キリギリスの居ない世界」がいかに乾ききって息の詰まる社会であるか、身をもって知りました。
そしてこうなってみて初めて、人の数だけある“不要不急”たちのどれもが、実は自分のパーソナリティの核を成す、かけがえのないものだったという真実にたどり着いたのです。

自分にとっての“不要不急”、すなわち何があっても守りたいものは何か。新型コロナウイルスの蔓延は、一種のショック療法じみたインパクトをもって、それを問いかけています。

キリギリス上等!

イソップ寓話でおなじみのキリギリスは、のんべんだらりな自堕落キャラの代表格です。
しかし、キリギリスのパフォーマンスがどんなに世界を楽しく豊かに彩っているか、という視点が抜け落ちているのは、甚だ疑問と言わざるを得ません。
だってアリさん連中なんか、まあまあ勤勉でお利口さんかも知れないが、アーティスティックな才能などカケラも持ちあわせてやしませんよ(強め推定)。

そしてそして、そんなキリギリスの存在価値の軽視と、こたびの“不要不急”問題は、どこか深いところで交差している…そんな気がすごくするんですがどうでしょう。

楽しそうに見えるキリギリスも、その道を選んだ覚悟を今まさに試されています。特に、活動の場を奪われた人間界のキリギリス族にとって、今ほど厳しい冬の時代はないかも知れません。実際に生活の困窮など、目の前にはきれいごとでは済まない現実が横たわっています。そこは決して忘れちゃいけない、いえ、自分自身も立場を同じくする身として、忘れようがないのです。

とは言え。キリギリスって実はそんなにヤワじゃない、という気もするんですよ。とりあえず、どこか狭いところで暖を取りながら体力を温存し、復活の日に向けて曲を作ったりして、どっこい生きてるぜ、みたいな。
転んでもタダでは起きない鋼のメンタルとプライドをもって、逆風を器用にいなしながら新しい道を見つけて進んで行く…ほらね、こんなカッコいいこと、アリには絶対出来っこないんだって!

とにかく生きろ、生き延びて前に進め。
自分を含め、全ての“不要不急”を創る人と支える人にメッセージするため、本ブログは生まれました。

まとめてウェルカム、“不要不急”

申し遅れましたが当方、そんな“不要不急”畑をひたすら歩いてきたキリギリス系雑食ライター、Sheilaと申します。業界新聞記者等を経て、書き屋業は30年を超えました。

ここでは、“不要不急”コンテンツをキリギリス族のソウルフードと位置づけて、大人目線でやさしく拾い上げ、ちょい辛スパイスで炒めてユルく発信していきます。
このご時世で切り捨てられそうなカルチャー全般から、懐かし話にモヤる話、くっだらない小ネタまで、アンテナに引っかかってくるものは何であれ食材と見なして調理、もとい全力で“応援”します。
焦げ付かないよう火加減には細心の注意を払いますが、あくまで努力目標ですので悪しからず。

余裕を失くしがちな毎日でも、自分の中の“不要不急”への栄養補給は忘れずにいたいもの。
みんなでちょっとずつ、ヘンな元気をシェアできれば幸いです。

そこまで来ている、誰も見たことの無い時代。顔を上げて、前に進むために。

以上、長くなりましたが、ごあいさつに代えまして。

Sheila