34. “あの箱”と共に去りぬ

ダンボール箱ひとつでサヨナラの国

世界中が、11/3に行われたアメリカ合衆国大統領選挙の行方を見守っています。
投票日からだいぶ経つのに、未だ終わりが見えない接戦がこんなに続くとギャラリーもいいかげん疲れてくるもんですが、いずれは決着がつく話。だから、アタシここで待ってます。

政権交代の折には、前政権側はさっさと荷物をまとめてホワイトハウスを立ち退く決まりです。
ところがなんスか現大統領、やだモンちがうモンどかないモンとゴネまくり、訴訟も辞さない構えだとか意味不明すぎ。あの彼らしいと言えばそうだけど。
彼が任期中に何か一つでもイイとこ見せるとしたら、あとはもう去り際のタイミングしか残ってないじゃん……って、もう決まった前提でモノ言っちゃったな、いかんいかん。


ところでアメリカって、上司の機嫌を損ねただけで即クビになるイメージ、ありませんか?
原因はおそらく、映画やドラマで、私物をまとめたダンボール箱を脇に抱えて「じゃ、元気で」と言い残してオフィスを去る人の様子が、お約束のように描かれるせいではないかと。

いつも感心するのは、あの“例の箱”の絶妙すぎるサイズ感です。私物が全部入って、手持ちで運ぶのにジャストな体裁のダンボール箱、あれ総務に行くともらえるんでしょうか。「一人1枚だけだよ」とか冷たく言われたら、ますます心折れそうだけど。

箱に入れるのは、まず家族の写真入りスタンド(こんなの置いとくから家族が事件に巻き込まれるんだと、彼らはなぜ学ばないのか)、あとは数冊の書籍、表彰楯、そしてマグカップ。
人によっては、会社の備品をガメるとかも普通にありそう。特に、不本意な辞め方をする闇深そうなケースは要注意かも……などなど、想像がふくらんで困ります。


去り際にこそ、流儀が必要

正社員や派遣社員、アルバイトなどさまざま経験して分かっているのは、住まいと同様、長居した職場ほど私物が多いということです。まあ、誰でも分かりますよね。
残業デフォのフルタイムなら、職場は途方もなく長い時間を過ごす場所。ならばできるだけ快適な環境にすべく、人は無意識に工夫を重ねるものなんですねきっと。

マグカップにひざ掛け、社内履きサンダルなどの自前アイテムは、正式なメンバーとして職場に根を下ろした感を強める、つまり帰属意識や連帯感を高める効果があります。
卓上カレンダーや洋服ハンガー、果てはドーナツ座布団(!)などなど、少しずつ持ち込んだ私物でテリトリーを構築する行為は、もはや動物的本能と言ってよい。
だから、異動や席替えがめったに無い職場では、古参社員の席がちょっとしたヴィレヴァン状態と化してしまうのです。

問題なのは、こういう人がイザ退職とか異動になったときで、当然、小さなダンボール箱1個くらいで間に合うはずがありません。
言っとくが私物の残置って、公衆5大迷惑行為の一つだからね(そんなん無いって)。
立つ鳥跡を濁さず、って昔の人はよくぞ諭したものです。

昨今のフリーアドレス制は、こうした個人席のヴィレヴァン化を防ぐには、非常に有効な手段ではあるでしょう。しかし逆に、私物の入り込むスキがあまりに無さすぎる職場となると、管理過剰で人間味に欠ける……個人的には、そっちのほうが居心地悪くていただけませんね。


大統領府に話を戻すと。もし、前大統領が退去を嫌がったら? ……その場合は、退役軍人の方々が喜んでエスコート役を買って出るつもりがあるんだってよ良かったね!
一応は大国の元首だった人物、そのように礼を尽くすと申し出てるんだから、ジタバタしないで相応しいふるまいで応えておやりなさいよと、誰か言ってやって。

そーだ、ここはいっそ、ダンボール箱一つを小脇に抱えて去る姿を見せる、なんてのもアメリカ流にドライで粋かもよ。ヘリで上空に消えるような大仰な演出は、もう古いって気がするし。
でもなあ、去り際の哲学とか敗者の美学なんて、あの輩に説くくらいならウチでゴロ寝するほうがよほど有意義……ああ、また決まった前提で発言しちゃった、いかんいかん。二度目。

Sheila

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