19. アベの声明から一夜明けて

特別な夏の去り際に

昨日のこと。第98代内閣総理大臣である安倍晋三首相が辞任の意向との第一報が伝わったとき、政界関係者や報道陣は、とにかくビックリした驚いた、予想しなかったと口を揃えて騒ぎました。
しかし、最近の冴えない顔色はお世辞にも元気いっぱいには見えなかったので、私はむしろ「ああ、やっぱりな」という感想しかありません。

政治家さんの場合、たとえ噂であっても、健康不安は政治生命に直結する大問題です。軽い治療での「入院」に尾ひれが付いて“命取り”になる可能性もあるほどだと言います。
そのため、今回この種の情報が前もって大々的に流れるのはかなり珍しく、それだけに事態の深刻さがうかがえる出来事ではありました。

記者発表のニュース番組内では、最初の首相就任当時、2006年の映像が何度も流れましたが、改めて見ると、彼も若かったんですねぇぇ!
長らく、年齢のわりに髪があまりに黒々していて「怪しい」なんて言われてたのに、このところ急に白いものが増え、めっきり老け込んだ印象。昨今の非常事態にあって、国家元首として陣頭指揮を執るストレスの大きさについてだけは、コチラも理解しようと鋭意努力中ですが。

〈アベノマスク〉が残したツメ痕

かつて安倍氏が打ち出した経済成長戦略〈アベノミクス〉は、そのネーミングセンスで国民を呆れさせました。対して、コロナ対策における〈アベノマスク〉は、俗称であるにも関わらず、秀逸なパロディセンスに唸らされます。歴史に残るのは、たぶんこっちのような気がしますね。
ちなみに別の派生語〈アベノフォン〉って、覚えてる人いますか?

しかしヒドかった、届いたマスクの現物ときたら。まず、サイズがあり得ないレベルに小さい。昭和の昔の学校で、顔の大きな男の先生が、口だけ覆えるちっちゃなガーゼマスクを無理やり着けてた姿が思い出されて切ないんですよ。
さらには、衛生用品にあるまじきゴミやら虫の混入とか。何なの。巨額の公費を投入すべきはそこじゃないって言ってんのに!

アピールポイントは「洗ってまた使える」ことだけで、飛沫もウイルスもダダ漏れしまくりのガーゼマスクを見せられたときの脱力感たるや。
誰の主導か知りようもないが、100年前のスペイン風邪から1ミリも動いてない感覚の持ち主が、お役所には今もわんさかうごめいていることだけは、よーく分かりました。

今はただただ懐かしい、キャン違い動画コラボ

星野源の在宅キャンペーン動画『うちで踊ろう』乱入干渉の失態も、ガーゼマスク好きな側近の入れ知恵疑惑が払拭できていません。
お坊ちゃま育ちの安倍氏が空気を読めなかったんだとしたら、ある程度仕方がないことかも知れない。だから、公人として投稿する前にチェックするのが側近の本来の役割だし、炎上の際の責任もそっちにあるんではと。

しかし周りの人間までガーゼマスクどまりのセンスだったんじゃ、どう転んでもああいう結末にしかならんというものですね。
なので、海外ではたまに聞く“粋な計らい”的なイイ話を、ウチの政府に求めてもムダってこと、これもよーく分かりました。

コロナ以降、ことごとくボタンを掛け違えてばかりで、少々お気の毒ではある安倍氏。グレーな話題もいろいろあってしかも放置なのはアレだけど、お疲れなのは事実だし。まずは療養ですかね。
政界の世代交代などは、さすがにまだまだ先の夢物語かも知れません。
だとしても、万事が急速に変わりゆく時代に、私たちは紛れもなくこうして在るのです。

Sheila

18. 現代版〈お片付けのツボ〉③

“まだ使える”の沼とモノの寿命

基本、腐らないとされるモノのほうにも、寿命はあります。モノの寿命というものは、手放しのタイミングを知らせてくれる最強にして最後のチャンスなので、もっと意識すべきだとは常々思うことです。

まず分かりやすいのは、カビや汚れ、変色・変質などの経年劣化。触る勇気すら出ない状態で発見したときのショックはなかなか強烈ですが、一も二もなく廃棄処分できる点で、まだタチが良いと言えます。

厄介なのは、流行遅れや型遅れ。まだ十分使用に耐えるので、年配者に多い「もったいない」や「まだ使える」系の“魔の引き留め”に遭いやすく、手放し作業で最大の障害となります。

昨シーズンのヘビロテ服が、今年はもうアカンようになってまうのは、直感がアウトだと判断してるのに、思考がフル回転で“捨てないで済む言い訳”を探してしまうためです。
それか、買って10年程度の道具ならまだ全然使えるけど、最新型のほうが性能も使い勝手も断然良くて魅力的、という場合もよくあります。
“まだ使える”は、ひょっとしたら単純な“もったいない”よりも、ずっと悩ましいステータスかも知れません。

物持ちの良さがアダになる瞬間

身近にあるウレタン系のゴムや樹脂は、水分による劣化、即ち加水分解が最大の弱点です。
スニーカーのソール部分がボロボロになるのもそうだし、しまっておいた合皮のバッグや小物がベタベタになっててどうにもお手上げ、ってあれ悲しいですよね。
素材の中には、現在の技術をもってしてもなお避けられない、経年劣化という宿命があります。保管するのは構わないけれど、その点の認識だけは必要なのです。

最近、古いCD製品のケースに同梱された緩衝材のスポンジが劣化し、ディスク表面の樹脂層を溶かしてしまうというショッキングな事例報告が相次ぎ、問題になっています。
市場に出回り始めた頃のCDなら40年近くも経過しているはずですが、本来は開封後すぐに捨てるべき薄ぅ~いスポンジ素材が原因で完全にオシャカとは! そ、そんなあ!
すでに廃盤の貴重な音源が二度と再生できなくなったと嘆く人が続出する今、超古いCDをお持ちの方は、すぐに総点検されることをおすすめします。

ちなみにわが家でも、あるとき父所有の古いスピーカーのスポンジネットが、みごと粉末状に崩壊しました。よくマンガとかで、人や物体が黒い粉になって風で飛ばされて無くなっちゃう、まさにああいうディストピアな光景でしたね。
見えない場所のあちこちによく使われているスポンジ素材は、マジで要注意アイテムです。

物持ちが良いことは美点ではありますが、劣化しやすい素材が使われたモノは意外に短命です。経年劣化は予想しない事故を招くし、そうならずとも結局は廃棄処分せざるを得なくなります。すると、これまでの努力と時間はすっかりパアです(あえてそこまで計算して放置し、廃棄の理由にする人もいますが、あまり付き合いたくないタイプ)。

これからは、“モノ自体の寿命サイクル”という概念を、保管or手放しの判断材料の一つに加えてみてはいかがでしょうか。
限りある自分自身の持ち時間と空間を優先するには、ちょっとばかり冷酷になる必要が、やはりどうしてもあるようです。

Sheila