10. ファッションに賞味期限表示が付く日

一生モノか、消耗品か

戦時を経験した世代がおしなべてそんな感じであるように、私の母もまたモノを捨てないのはもちろん、“良いモノは一生モノ”の考え方を最後まで捨てませんでした。
こと衣類に関しては、結婚前に仕立てたワンピースや重たいウールのスカートをずっとしまい込んでいて、処分に困ったものです。

もっとも、今のように安価な既製服が量産される市場環境の無い時代には、服は自分で縫うか、仕立てを頼むしかありませんでした。だから戦後、幼な子を抱えた多くの女性が洋裁で生計を立てたのは、非常に現実的かつ合理的な手段だったのだと思います。

一方、現代のファストファッションはサイクルが加速の一途で、まるで使い捨てさながらに、旬の寿命が短い! ひと夏は異常にヘビロテしたトップスが、翌夏には何だかしっくりこない、早い話が“アガらない”アイテムになり果てていたという経験、ありますよね?
クローゼット内にある購入後1~2年着ていない服は潔く処分を、のルールも、いい加減アップデートしないとまずいのでは。

トレンドの終焉は誰が決める?

40代以降の女性の大半がぶつかる、“リアルクローズの壁”が厄介なのは、体型変化だけでなく、ファッション全般の“賞味期限問題”と、イヤぁな具合に絡み合っていることも一因です。
そこへブランドや値段がどうとかの個人的事情が、とてつもないジレンマを生み出しているケースもあるでしょう。
かと言って、何もかもワンシーズンで着倒して処分しちゃえってのも、分別ある大人のすることじゃない気がして、苦しい。苦しいですよねそりゃあ。

でもね、今の服たちは、体型変化や生地の劣化、はては流行すらも無関係なところにある“何か”の作用で、その役割をさっさと終えてしまってるのです。
2年前のパーカーを着てるだけで即イタいオバさん認定される世の中を恨んでみても始まらない、今はそんな時代なのです。

コロナの打撃が深刻なアパレル業界は、購買促進の一環として、製品に〈賞味期限タグ〉を付けてくるかも知れません。完全に想像ですが。トレンドの期限なんて他人から指図されたくないわと言うそばから、期限切れ表示には敏感に反応する人って、意外と多いと思います。これも想像。
古い服への未練を断ち切るモチベになって、案外すんなり普及しちゃったらそれも怖い気がしますけど。

カタチが有って無いようなファッションの〈概念〉との付き合い方が、今後どう変容していくのか。嵐に巻き込まれないよう、一歩引いて物陰からそっと経過観察するとしますか。

Sheila

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